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排水の復旧を十分に行うことが重要であると思います。また、その利用効率を高めることも重要です。
たとえば、先ほどから話題に上がっているラオスの場合ですと、灌概の重要性が述べられておりましたが、灌概があってもその利用効率は30%程度でしかありません。
また、持続可能な農業生産を実現するためには、現場における水管理・経営を変える必要があります。一般的に言って、農業従事者は無制限に水を使います。水が限られたものであるという認識がないのです。「農業従事者の農業用水使用に対する教育」がぜひ必要です。必要なときに必要な量を使うという教育を徹底する必要があるのです。また、利用者に水路の補修を義務づける等の方策も必要になってくるでしょう。
また、アジアの現状を考える場合、食料増産を果たすには天水使用集約農業の調査を行う必要があると思います。乾燥種子法を活用することで天水農業でも二期作が可能になります。また、貯水池など、小規模な水の貯蔵場所を作って、降雨量の変動に備えることが必要であると思います。さらに、早魃に強いタイプの種子を採用することなども対策として考えられます。
また、地下水は使用した後に復旧が非常に困難で、地下水を農業用水に無制限に利用することは規制するべきであろうと考えます。
新しい灌海設備を作るというよりは既存の設備を改善することで灌概対象面積を拡大するなどの方策を採ることの方が効果的であろうと思います。
現在、上流地域での灌概面積が拡大することで下流の塩害が激しくなる場合があります。メコン川の事例では上流での取水が増えることで、メコン川の水量が減少し、それまで海水の被害を受けなかった地域まで海水が浸入し、塩害を引き起こしています。
中東地域では、海水を脱塩して淡水にしていますが、この技術はあまりにも費用がかかり農業用には使えません。今私たちが行うべきことは、立法者として水資源の適切な配分を考えることであろうと思います。たとえば、大規模な灌概計画の場合、その灌湖事業は農業従事者だけで実行するのではなく、多角的な観点が必要です。そこには政府が関与するべきでありますし、政府の役人は技術的な知識を持っている必要があります。
また、農業従事者から料金を収集することも必要です。民衆から選ばれた人が料金を集め、その人の給与に充てるなどすることで灌概の管理が容易になります。さらに、アメリカで行われている水の価格設定も参考になります。米国では農家が水の使用権を持っています。その農家が、米を栽培しない場合、市にその水使用権を売却し、市はまたその水の使用権を必要な人に売却するのです。こうすることで、無理して水を使ったり、必要な人が使えないという状態が改善されます。また、過剰な農業用水の使用を改めるために、水利用税を課してその料金を水使用量に対して累進性を持たせ

 

 

 

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